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“うつ”について

講師のご紹介

慶應義塾大学医学部精神・神経科教授
鹿島晴雄 (かしま はるお)先生

講師略歴

慶應義塾大学医学部卒、慶應義塾大学専任講師を経て同大学医学部教授就任、現在に至る。
専門:精神神経科

開催日 2008年5月14日(水)
会場 新宿住友ビル (スカイルーム 47階)

今回のメディカルセミナーは豊富な臨床経験を誇り、精神疾患領域で著名な慶應義塾大学医学部精神・神経科教授 鹿島晴雄氏を講師に、『“うつ”について』と題し開催しました。以下にダイジェストをご紹介致します。

【「うつ状態」と「うつ病」は違う】

昔でいう「神経衰弱」や「ノイローゼ」に代わり、いまや「うつ」、「うつ病」は精神的な不調一般の代名詞となっています。しかし身近で理解しやすく思われるためにかえって本当のところが知られていないという側面があります。一般には「うつ状態」と「うつ病」は区別されていませんが、精神医学では憂うつな状態である「うつ状態」と病気としての「うつ病」を区別します。だだし重度のうつ状態、軽度のうつ病も存在しますので、症状が重い=うつ病、軽い=うつ状態という訳ではありません。

「うつ状態」は、様々な要因により生じる憂うつな状態を指し、喜びや怒りと同様、誰もが体験する心の状態です。精神的な症状は一つのつながりを持っていて、程度の差であるとするという考え方では、軽症から見て、うつ→躁→錯乱→認知症と進行します。うつ状態は最も多く最も軽い心の障害です。軽い=辛くないと言う事ではありませんが、障害の程度が軽ければ治りやすいと言えます。一方、病気としての「うつ病」では、憂うつな気分「抑うつ気分」以外に「意欲や行動の低下」「身体症状」が生じます。3つの症状が揃うケースが最もポピュラーですが、症状が部分的に出る場合もあります。また日内変動が特徴的で、一般に朝方から午前中に症状が強く、夕方から夜にかけて軽くなる傾向があります。

  • 抑うつ気分・・・気分が落ち込み何事も面白くない、また訳もなく悲しい気持ちになったりする。
  • 意欲や行動の低下・・・億劫で何も出来ない、仕事も休みがち、外出を嫌う、人と会うのを避ける、思考の進み方も遅くなる。
  • 身体症状・・・睡眠障害、食欲や性欲の減退、時に過食。頭痛、めまい、動悸、口渇など様々な身体的不調が起こる。

【うつ状態とうつ病の分類】

うつ状態・うつ病は原因により治療のアプローチ方法が異なるため、以下の4つに分類されます。

【内因性うつ病】
脳の機能変調によって起こる病気としてのうつ病。原因は未だ不明だが身体の内に起きた変化により生じるので「内因性」と呼ぶ。脳内にあるノルアドレナリンやセロトニンといった神経細胞間の情報を伝達する物質の代謝の変化が推定されている。

(1)双極性躁うつ病におけるうつ病(憂うつ・躁の双極で気分がぶれる)
(2)単極性うつ病

【反応性うつ状態】
辛い心の体験に反応して起こるうつ状態(例:大震災など大きなショック)

【症候性うつ状態】
がん、内分泌疾患、脳血管障害などの身体病や薬剤によるうつ状態

【神経症性抑うつ】
普段から憂うつに傾きやすい心の持ち方、性格と関連するうつ状態

このうち、内因性うつ病に属する「単極性うつ病」は近年増加傾向にあり、臨床的にも最も重要です。主として40歳以降の中年から初老期に発症し、特徴的な性格傾向として執着性格、メランコリー親和型に圧倒的に多いという事が言えます。具体的には生真面目、几帳面、人に気を使う、秩序を重んじるといった性格です。慢性的なストレス状態のもとで続けていた生活状況を変えるような出来事(喪失体験、栄転・昇進などの良い出来事、定年退職)など、しばしば発症の誘因が認められます。

【うつ病の診断】

抑うつ気分、意欲や行動の抑制、身体症状、症状の日内変動、性格の特徴、発病前の状況などが確認されれば比較的容易に診断が下されます。特殊なものとして身体症状が前面に立ち、抑うつ気分が目立たない「仮面うつ病」や一見認知症のように見える「うつ病性仮性痴呆」も存在します。うつ状態は誰もが経験する、ありふれた心の状態であり、本人も周りの人もそれを何らかの心配事や悩み事のためと解釈し、なかなか専門家を訪れず診断と治療が遅れる事が多いのが現状です。尚、うつ病に気が付く人は家族よりも職場の同僚、上司に多い傾向が見られます。

【うつ病の治療と経過】

治療方法は「薬物療法」が中心です。三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニンキノルアドレナリン再取り込み阻害薬、抗精神病薬(不安愁訴や自殺願望が強い場合に使用)といった抗うつ薬が色々と開発されています。抗うつ薬は効果が出るまで時間がかかりますので、即効性がありかつ安全な治療法として「電気けいれん療法」が用いられるケースもあります。また休養と精神療法(認知療法など)も重要。周囲の方は辛さをよく聞き、希望や慰めを与えることが必要ですが、力づけたり励ましたりすると本人をますます無力感に追い込みますので避けましょう。病期の多くは6~9ヶ月で、自然の経過でも必ず良くなるものです。病期の回復は普通1~2回程度です。

【うつ病への周囲の対応】

    うつ病患者に対して周囲の方は、次のことに気をつけて対応する必要があります。

  • まず病気であることを理解する。
  • 休ませる。
  • 叱咤激励しない。
  • 病院へ行くことを勧める。
  • 重大な決定をさせない。(重大な決定は全て先延ばしに)

    また、うつ病患者の職場復帰に際しては、以下の点に配慮する必要があります。

  • 職場の受け入れ態勢を整える。
  • 原則として「今までの職場」へ
  • 出勤開始はまず挨拶から
  • できれば1~2週の「定時出勤練習」を
  • 復職後3ヶ月は週末気分動揺に注意
  • 「早すぎる服薬中止」を避ける
  • 病気の経験を何らかの形で生かしてもらう

※記事の文責はBRBメディカルサロンにあります。

参加者の声:

  • “うつ”と“うつ病”の違い、周囲の対応方法などが良く分かりました。
  • 今までの知識と異なる情報を得られて良かったです。
  • 説明が上手で、質疑応答も丁寧で有意義でした。

参考URL:

慶應義塾大学病院 精神・神経科
http://www.hosp.med.keio.ac.jp/shinryo/neuropsy/index.htm

日本精神神経学会
http://www.jspn.or.jp/index.shtml

本件に関するお問い合わせ先:

BRBメディカルサロン 担当:企画推進室 広報 蒲川(かもがわ)・山田
Tel:03-3343-4511 Fax:03-3343-5845
E-mail:info-medical@brb.co.jp

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