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わかりやすい前立腺がんの話

講師のご紹介

慶應義塾大学医学部泌尿器科教授
大家 基嗣(おおや もとつぐ)先生  

講師略歴

慶應義塾大学医学部卒、同大学医学部泌尿器科講師を経て、同大学医学部泌尿器科教授就任、現在に至る。

専門:泌尿器科

開催日 2009年2月24日(火)
会場 銀座文祥堂イベントホール (銀座3丁目)

 BRBメディカルサロンでは去る2月24日、講師に慶應義塾大学医学部泌尿器科教授大家基嗣氏を講師にお迎えし、『わかりやすい前立腺がんの話』のテーマでメディカルセミナーを開催致しました。以下にその要約をお送りします。

前立腺とは

 前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱の出口で尿道を取り囲むように存在します。大きさはくるみ大で、前立腺液を分泌し、精子の運動や保護に関わっています。年齢と共に肥大する傾向があり、男性ホルモンが燃料になっています。

前立腺がんとはどのような病気か

 前立腺がんは前立腺肥大症とは全く違う病気です。前立腺肥大症は前立腺の移行領域(内側)が肥大するもので、転移することはありません。一方前立腺がんは主に辺縁領域(外側)に悪性腫瘍が発生するもので、他臓器に転移することもあります。初期は無症状のため気づきにくいのですが、進行に伴い尿が出にくい、排尿時に痛みを伴うなど前立腺肥大症とも似た症状が現れます。さらに進行すると骨やリンパ節などに転移し骨痛・四肢痛が出てきます。

 前立腺がんは1)高齢男性に多い(50歳を過ぎたら要注意)、2)進行が比較的ゆっくり、3)早期であれば根治が可能、4)内分泌療法が有効であるという特徴があり、他のがんに比べると予後が良いと言えます。欧米諸国では大変多いがんで、アメリカでは男性のがんの罹患数第1位、死亡数では第2位となっています。日本でも最も増えているがんの一つであり、2020年には男性のがん罹患数において第2位になると予想されています。

 前立腺がんの原因は明確には分かっていませんが、年齢(高齢化)、遺伝(家族や親戚に前立腺がん患者がいるとリスク増)、人種(アメリカ黒人に多い)、食生活(脂肪の多い食事、緑黄色野菜の不足、過度のアルコール)など生活習慣も関与していると考えられています。

 専門家から見ると、前立腺がんは1)潜在がんの代表、2)PSAというマーカーが存在しスクリーニングと病勢判断に有効、3)ホルモン感受性のがんである、4)骨に転移することがある、5)治療方法が多岐にわたるという点が特徴です。早期がんと診断されても後述するPSAやグリーソンスコアでリスク分類をする必要があること、治療が排尿機能や性機能にもリンクしていることなどから、診療においては専門知識が必要とされます。

前立腺がんの検査、診断

 検査、診断はスクリーニング→確定診断→病期診断というのが大きな流れです。スクリーニングはPSA (ProstateSpecificAntigenの頭文字をとったもので、前立腺特異抗原との意)という、広く普及している腫瘍マーカーで行われます。この他、直腸壁ごしに前立腺の状態を確認する直腸診や、前立腺の大きさやがんの浸潤の有無を確認する経直腸的超音波(エコー)検査があります。PSA値が高いほど前立腺がんの可能性は高く、正常値である4.0ng/mlを超えると確定診断のため組織を採取しがん細胞の有無やその悪性度などを調べる生検を行います。PSAは早期がんの発見に大きく貢献していますが、PSA値が高くてもがんとは限らない(グレーゾーンである4~10ng/mlの方のうち、がんの方は20~30%に留まる。一方前立腺炎や前立腺肥大症でも上昇する事がある)など問題点もあります。また直腸診で正常とみなされたり、生検でがんが検出されなくても絶対にがんが無いとは言い切れないという点も課題です。

 PSA及び生検でがんが見つかった場合は組織の構築(集団)を5段階に分ける「グリーソンスコア」で悪性度を分け、さらにMRI・CTによる画像検査や、骨シンチグラフィーによってがんの進行度(広がり)を確認します。その上でTNM分類(Tは原発腫瘍、Nはリンパ節転移、Mは遠隔転移を指す)に基づいて病気を分類し、治療法を決定します。

前立腺がんの治療~多岐にわたる治療法~

 前立腺がんの治療法はとても複雑で、方針決定には1)がん(病期、PSA、グリーソンスコア)と2)患者さん(年齢、合併症、趣向)という2つの要素を考慮する必要があります。慶應義塾大学病院の2007年度新規患者さんの治療では、前立腺全摘術(腹腔鏡下)が113件、小線源治療が65件、外照射が44件でした。さらに内分泌治療と抗がん化学療法も行われ、全体では200件以上の症例となっています。

 限局性がんの治療では、根治の基本は外科的切除で、手術を行う目安は72歳位までです。慶應義塾大学病院泌尿器科は体腔鏡(別名腹腔鏡)下手術の症例数全国一を誇ります。この手術法は切開創が小さく回復が早い点が利点ですが、尿失禁と勃起障害が併発されやすく、限られた認定施設でのみしか受けられないというのが現状です。早期がんの場合など高齢者では待機療法が選択されるケースもありますが、早期がんであってもPSAが20以上、グリーソンスコアが7以上ならハイリスクですので、相応の治療法を選択する必要があります。低リスク、高齢者、ED回避という場合はシード線源を埋め込み内部から治療を行う小線源治療が有効です。小線源治療は80歳位までを目安に行われ、欧米では手術等と並ぶ標準的治療となっていますが、治療後は排尿障害をきたす場合があります。

 一方局所浸潤がんに対しては、放射線治療である外照射療法を基本に、内分泌療法を併用することもあります。外照射の中でも最新の治療法であるIMRT(強度変調放射線治療)は、がんの形に応じて様々な方向から強度を変えてピンポイントで放射線を当てることができ、組織内照射に比べ低侵襲で直腸、膀胱障害を回避できる利点があり、昨年保険適用の対象となりました。

 転移のある患者さんには内分泌療法が行われます。内分泌療法にはLHRHアナログ(前立腺がんの燃料である男性ホルモンの分泌を抑制する注射)、抗男性ホルモン剤、またはその併用という3つのパターンがあり、この治療法にはほてりや女性化乳房、むくみ、骨粗鬆症といった特有の副作用が現れます。内分泌療法抵抗性がんは難治で、これまで効果が期待できる抗がん化学療法が無かったのですが、昨年8月にドセタキセル(タキソテール)という治療薬が前立腺がんに対しても追加適応となり、副腎皮質ホルモン剤・プレドニゾロンと合わせて使われるようになりました。内分泌療法抵抗性の前立腺がんは致命的となりうるため、この治療が今後の最大の課題と言えるでしょう。

※記事の文責はBRBメディカルサロンにあります。

参加者の声:

  • 前立腺がんの全体像がよく分かりました。
  • 発見から治療方法まで参考になりました。正確な情報を得ることがいかに重要かと考えました。
  • 大変分かり易く、且つ非常に詳細に現在の最適療法もご説明頂き有難うございました。

参考URL:

本件に関するお問い合わせ先:

BRBメディカルサロン 担当:企画推進室 広報
Tel:03-3343-4511 Fax:03-3343-5845
E-mail:info-medical@brb.co.jp

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